元気パンダの漢方日記
国際中医師の資格を持つ薬剤師が、漢方医学の知見や日々の出来事、趣味のパンダコレクションの紹介をするブログです。






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不妊症・周期療法

皆さん、こんにちは。
先週の水曜日(12月17日)に「イスクラ中医薬研修塾」で、第8回目の講義を行なってきました。今回は「不妊症・周期療法」というテーマです。だんだん実践的な内容になってきました。

1、周期療法とは

結婚して避妊をせずに通常の夫婦生活をしているにもかかわらず、2年以上子供ができない場合は一般に不妊症といわれています。最近では1年で子供ができなければ何らかの不妊につながる障害があるという考え方もあるようです。
近年中国では中西医結合といって伝統的な中国医学の治療法に西洋医学の考え方を結合してより治療効果を高める方法が一般的に行われています。周期療法はこの中西医結合によって作られたすばらしい治療法です。周期療法の最大の特長は、生理周期にあわせて漢方薬を使い分けて妊娠の確率を高めることです。
生理期:活血薬と理気薬を併用して、子宮内の血液や内膜をきれいに排出させる。
低温期:滋陰養血薬により腎陰をしっかり補い、卵子を育て子宮内膜を成長させる。
排卵期:活血薬に補腎温陽薬を併用して、排卵をスムーズにする。
高温期:補陽薬と補気養血薬を併用して、受精卵を子宮内に着床できるようにする。

2、周期療法の基本的な考え方

中国医学の考え方では心は神明を主り、腎は精卵の発育と排泄を主宰して生殖を主ると考えられています。神明は大脳の働きと同じですので、心-腎-子宮の生殖軸によって月経周期をコントロールしていると考えています。このような考え方は西洋医学の視床下部-脳下垂体-卵巣-子宮の生殖軸の考え方と一致しています。
生殖軸には肝と脾胃も協調しています。肝は疎泄を主り自律神経による調節と関係しており、脾胃は運化を主り食物の消化吸収を通じて血や精を補っています。よって心-腎-子宮の生殖軸のコントロールには肝と脾胃が深く関係しているといえます。
このような中国医学の理論をベースとして、西洋医学の生理周期や基礎体温の概念を結合させて、周期療法の基本的な考え方が作られました。

3、特殊なケースについて

①子宮に異常がある場合
子宮性に異常があるケースとしては、子宮発育不良、子宮筋腫、子宮内膜症、子宮下垂、崩漏などがあります。子宮筋腫や子宮内膜症がひどい場合はこちらの治療を優先して、症状が改善してから周期療法に移るようにします。症状が軽ければ最初から周期療法を行うことも可能です。

・子宮発育不良:婦宝当帰膠+参茸補血丸+海精宝、ビタエックスなど
・子宮筋腫  :婦宝当帰膠+桂枝茯苓丸+爽月宝、水快宝など
・子宮内膜症 :婦宝当帰膠+桂枝茯苓丸+爽月宝、水快宝、清営涼血顆粒など

②卵管に異常があるケース
輸卵管の通過障害の原因としては子宮内膜症、感染症などがあります。輸卵管の炎症や癒着がひどければ手術などにより除くことを考えますが、それほどひどくなければ通常の周期療法の上に加減を行います。生理期~低温期に冠元顆粒、血府逐瘀丸、爽月宝、開気丸、芍薬甘草湯などの疎肝活血薬を加味すると効果的です。

③免疫異常があるケース
免疫性不妊は抗精子抗体により精子を異物と認識して攻撃するため、受精卵が育つことができません。生殖器の慢性炎症が原因となることがよくみられます。免疫異常には①抗精子抗体の異常、②抗リン脂質抗体の異常、③夫婦リンパ球の類似、の3タイプがあります。陰虚肝旺タイプが多く見られますが、陽虚タイプもときに見られます。

・陰虚肝旺:加味逍遥散、柴苓湯+瀉火補腎丸+瓊玉膏など
・ 陽虚 :婦宝当帰膠+衛益顆粒+参馬補腎丸など
・ 淤血 :婦宝当帰膠+冠元顆粒+参馬補腎丸など

④生理周期が不安定なケース
無月経の人や生理周期があまりにも不安定な人は、周期療法を行う前に月経周期を整えるようにします。月経周期を整える場合は体質や症状によりさまざまな漢方薬を使い分けますが、養血・補腎・活血を中心に考えます。
月経周期を調節する漢方薬を飲んでいるうちに妊娠するケースもありますが、2~6周期服用して月経が整っても妊娠しない場合は、周期療法に移るようにします。月経周期を調節する漢方薬で基礎つくりができると、周期療法がうまくいくケースも見られます。

4、症例練習

34歳 女性 156cm 49kg やや色白  主婦

結婚6年 未妊娠 3年前より近くの婦人科に受診。最初の半年はタイミングを行っていたがうまくいかず、その後クロミッド治療に切り替わる。だんだん効きにくくなり、1年前よりHMGを併用する。人工受精は2年前より始めて、断続的に10回以上行った。婦人科では黄体機能不全といわれている。卵管は正常。精子検査も悪くない。

初潮:13歳  生理周期:33日~35日、高温期が10日前後と短い
生理期間:5日 
生理量 :2~3日に少し増えるが、それ以外は少なく、5日目は少量
生理の色:2~3日目は赤いがそれ以外は薄い赤色 
生理の質:全体的に薄い、レバー状の塊がある
生理痛は軽い(1日目に少し下腹部痛) 生理前の不調は特になし。
おりもの:期間は2~3日。透明で粘りがあるが、量は少ない。臭いはない。

手足が冷える 食欲はある 少し便秘気味 時々立ち眩み 目の疲れあり
その他は基本的に問題なく健康である。

①問診のポイント

・生理の状況を聞くこと:生理の量、色、質、生理周期の4つを詳しく聞くこと。初潮年齢、初潮から2~3年後の状況と現在との比較、或は結婚前と結婚後との比較が大切。
・おりものの状況を聞くこと:錦絲状であることが大切。生理期と対応しているか?
・基礎体温を判断すること:全体の形と排卵前後の上がり方を見る。
・西医の治療経過を聞くこと:排卵誘発剤、ホルモン剤の服用状況。血液検査の結果。体外授精の経験など
・婦人科の病気を聞くこと:子宮筋腫、子宮内膜症、多嚢胞性卵巣、卵巣嚢腫、高プロラクチン血症、性器感染症、流産歴など
・全身症状を聞くこと:冷えの有無、食欲と二便、生理前の症状、イライラなど

*婦人科の弁証と全身弁証を結合して、矛盾点を分析して、処方を決定すること。

②症例分析

生理状況の分析:生理期間は5日で正常だが、生理の出血量が少ないことより陰血不足、塊があることより瘀血、痰湿が判断できる。
全身症状の分析:手足の冷えより陽気不足、便秘気味、立ち眩み、目の疲れより陰血不足と判断する。
基礎体温の分析:低温期が長いことより陰長不良、排卵がスムーズでないことより陰陽転化不良、高温が短いことより陰虚及陽による陽虚、陽虚により濁陰が溶けることができず生理期に塊が出る。
西医治療の分析:クロミッドの長期使用により腎陰を消耗している。HMGの使用により瘀血が考えられる。黄体機能不全より陽虚がある。治療期間が長いことは陰血虚の根拠になる。

③弁証論治

腎陰虚、血虚がベースにあり、陰虚及陽による陽虚がある。兼証として淤血がある。

④処方

生理期:婦宝当帰膠+桂枝茯苓丸+爽月宝
低温期:婦宝当帰膠+杞菊地黄丸+海精宝
排卵期:婦宝当帰膠+冠元顆粒+参茸補血丸
高温期:婦宝当帰膠+参茸補血丸+参馬補腎丸

研修生も12月になり、だいぶ中医学の理解も深まってきました。今回の症例練習もだいたい理解できています。来年3月に卒業になりますが、今期の研修生は3人とも就職が決まりました。(1名は私のところに来る予定です)
私の講義は1月、2月に各1回あります。最後までしっかりと行ないたいと思っています。

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