元気パンダの漢方日記
国際中医師の資格を持つ薬剤師が、漢方医学の知見や日々の出来事、趣味のパンダコレクションの紹介をするブログです。






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活血化淤薬の歴史的変遷から見た冠元顆粒の価値

皆さん、こんにちは。

明日から来週の水曜日まで、寇華勝先生とともに中国・武漢に行っています。武漢の出来事については、日本に帰ってきてからお伝えします。しばらくはブログを更新できませんが、ご了承ください。

さて、今日(7月16日)は「イスクラ中医薬研修塾」で、第3回目の講義を行なってきました。今回は「活血化淤薬の歴史的変遷から見た冠元顆粒の価値」というテーマで講義しました。

「淤血」の概念は中国医学独自の考え方で、中医治療において重要な位置を占めています。古くは黄帝内経から認識されており、金匱要略で初めて「淤血」の病名が記載されました。その後、清代の名医、王清任までは特に大きな発展は見られませんでしたが、近代になり中西医結合の流れもあり大きく発展しました。日中の「淤血」に対する歴史的な認識を考察して、現代における冠元顆粒の価値と幅広い有効性についてお話します。

1、中国の古典「傷寒論」「金匱要略」に見る駆淤血薬

①金匱要略「驚悸・吐衄下血・胸満・淤血病」
「病人胸満、唇萎、舌青、口燥、但欲漱水不欲嚥、無寒熱、脈微大来遅、腹不満、其人言我満、為有淤血。」
「病者如熱状、煩満、口乾燥而渇、其脈反無熱、此為陰伏。是淤血也。当下之。」
金匱要略の淤血病についての記載です。舌の色や水を欲しても漱ぐだけなど現代の「淤血」の基礎とも言えます。
②傷寒論、金匱要略に記載されている駆淤血薬
 抵当湯、抵当丸、大黄しゃ虫丸、下淤血湯、桃核承気湯、
 桂枝茯苓丸、温経湯、当帰芍薬散 
傷寒論、金匱要略には現在も使われている漢方薬が多く見られます。よって傷寒論、金匱要略では「淤血」の認識は深かったと思われます。「淤血」の位置は太陽病蓄血症や婦人病に見られるように、下焦(腹腔内)を中心に認識していたと思われます。また抵当湯や大黄しゃ虫丸のようにかなり作用の強い駆淤血薬(破血薬)が使われております。

2、日本における淤血の認識

①後世方派における駆淤血薬
田代三喜・曲直瀬道三のおこした後世方派は金元医学を日本に伝えたものですが、代表的な方剤書である「衆方規矩」などを見るとあまり駆淤血薬は多くはないようです。傷寒論、金匱要略の漢方薬に比べて、見るべきものはあまり多くないようです。
  弓帰調血飲、四物湯加味、疎経活血湯、加味承気湯など
②古方派における駆淤血薬
傷寒論、金匱要略を指導書とする古方派は後世方派よりは駆淤血薬が多く見られます。特徴としては体質を虚証と実証に分けて、駆淤血作用を作用の強さにより使い分けていることにあると思います。
  (弱)当帰芍薬散→桂枝茯苓丸→桃核承気湯→抵当湯(強)
と順を追って作用が強くなります。腹診を重視しており、作用部位は下焦(腹腔内)にあります。
③一貫堂の淤血証体質と駆淤血薬
一貫堂は後世方派の流れを汲み、森道伯が創設しました。「漢方一貫堂医学」によると淤血証体質は「淤血」を腹腔内に多量に保有する者の総称で、赤ら顔で爪の色が暗赤色であり、肥満している婦人に多いとあります。症状として頭痛、頭重、眩暈、上逆、耳鳴、肩凝り、動悸、便秘などが見られ、通導散で治療するということになっています。
一貫堂医学では淤血証体質を三大体質の一つと認識して大変重要視していました。病名としても脳溢血、片麻痺、喘息、胃腸病(胃酸過多、胃潰瘍、胃癌)肝臓病、肺結核、痔疾、淋疾、神経性疾患(神経衰弱、ヒステリー)動脈硬化、常習性便秘、歯痛、眼病、腰痛、脚気、泌尿生殖器疾患、バセドウ病、虫垂炎、発狂、心臓病、婦人科疾患全般(特に子宮や卵巣の炎症及び腫瘍)があげられておます。
このように淤血証に対して優れた観点を持っていましたが、後世方には優れた駆淤血薬がなかったため、当時それほど知られていなかった万病回春・折傷門にある通導散を淤血証体質の主方として繁用しました。森道伯が活躍した大正~昭和初期は西洋医学が主流となっていたため、淤血証が現在の認識にかなり近づいています。

3、王清任による淤血証の拡大

王清任は明後期の著名な漢方医で、人体の解剖を行い、横隔膜の重要性に気付き、長年の臨床経験とあわせて血府という新しい内臓を推定しました。そして病気の多くは気血の異常にあると考え「淤血」を補気活血、理気活血の方法により治療しました。大きな特徴としては駆淤血薬を部位によって使い分けたことにあります。
  通竅活血湯、補陽還五湯:脳血管   血府逐淤湯:血府(胸・心臓) 
  少腹逐淤湯、隔下逐淤湯:腹腔内   身痛逐淤湯:四肢
特に血府逐淤湯は頭痛、胸痛、不眠など24の病気に使い淤血治療の幅を広げました。
また、それまで脳血管病は中風(外風或は肝風)、胸痛は胸痺(陽虚痰濁)として認識されていた疾患を「淤血」の病気として治療したことに大きな意義があり、後世に大きな影響を与えました。

4、中西医結合による現代の淤血証の認識と冠元顆粒の価値

近年の中国政府による中西医結合政策の影響により、現在は脳血管病や心臓病など血管病全般を「淤血」と認識するようになりました。これは伝統的な中国医学の認識から見るとかなり幅を広げたことになりますが、臨床実践や各種の薬理実験により有効性が証明された新しい発展と考えて良いと思います。
その中で毛沢東の心臓病を治すために、当時の中国医学界の総力をあげて開発された処方が「冠心Ⅱ号方」です。丹参を主薬に赤芍、川芎、紅花、降香の5種類の処方は強い破血薬の配合はないのに心臓病に対して優れた効果を発揮しました。
さらに猪越恭也先生とイスクラ産業の努力により、ストレスが多く胃腸の弱い日本人の体質を考慮して、降香を香附子、木香に置き換えた「冠元顆粒」が開発されました。
冠元顆粒の効果は薬局の臨床だけでなく、各種の薬理実験でも高い有効性が認められ、EBMのしっかりした漢方薬としての地位を確立しています。

現代の慢性疾患は、ほとんどが「淤血」と関係しているといっても過言ではありません。冠元顆粒の重要性は、治療においても予防においても、今後ますます高まっていくと思われます。

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